コラム

他己診断と自己診断は、何が違うのか

自分で答える性格診断は、性格ではなく「自分が自分をどう見ているか」を測っています。他人について答えると何が変わるのかを、実際に20問を作った過程から書きます。

性格診断はたくさんあります。そのほとんどは、自分で自分について答えるものです。「初対面の人と話すのが得意ですか」「計画を立ててから動くほうですか」。答えるのは自分で、判定されるのも自分。

読んだときは当たっている気がして、次の日には忘れている。心当たりのある人は多いと思います。

他己診断は、答える人と診断される人が別です。あなたが誰かを思い浮かべて、その人について答える。この違いは、思っているより大きいものでした。

自己診断が測っているのは、性格ではなく自己イメージ

「人の話をよく聞くほうですか」と聞かれたとき、人が答えているのは、実際に話を聞いている回数ではありません。自分は聞くほうだと思っているかどうかです。

この2つはよくズレます。しかもズレる方向には偏りがあります。

自分で答えると、答えは3つの力で歪む

1. よく見せたい

「人の話をよく聞く」「約束を守る」「感謝を伝える」。こういう項目は、そうでありたいと思っている人ほど「はい」を選びます。嘘をついているわけではなく、自分の中の望ましい像のほうを答えている。選択肢の片方に「良さそう」の匂いがついていると、その時点で答えは片側に寄ります。

2. 自分の「普通」は測れない

「連絡はマメなほうですか」に答えるには、他人の平均を知っている必要があります。でも人が継続して観測できるのは自分の連絡頻度だけです。比べる相手がいない問いに対して、人はだいたい「なんとなく真ん中」と答えます。

3. どの場面の話か決まらない

「社交的ですか」。職場では静かで、気心の知れた3人といるときはよく喋る人は、どう答えればいいのか。多くの人は、直近で印象に残った場面を思い出して答えます。つまり答えは、その週に何があったかで変わります。

他己診断では、この3つが形を変える

誰か一人を思い浮かべて答えるとき、同じ3つはこう変わります。

  • よく見せたい力は働くが、向きが変わる。好きな相手を診断するので、答えは相手に好意的な側へ寄ります。ただしこれは設計で扱えます。両方の選択肢を「どっちも嬉しい」に揃えれば、望ましさでは選べなくなる。自己診断で同じことをするには「私は約束を守らない」を選ばせる必要があり、そちらのほうがずっと難しい
  • 比べる相手がいる。あなたはその人以外の人間関係も持っています。「ほかの人には順を追って話すのに、この人には途中から渡せる」。他人との差なら、人は答えられます
  • 場面が具体的になる。特定の一人を思い浮かべているので、「二人で道に迷ったら」のように場面を直接聞けます。抽象的な自己評価を挟まずに済みます

いちばんの違いは、答えが「関係」だということ

AさんがBさんを診断した結果と、CさんがBさんを診断した結果は、たいてい違います。

これを診断の誤差だと思うと、他己診断は失敗した性格診断に見えます。でもそうではありません。Bさんという人が2種類あるのではなく、AとBの関係と、CとBの関係が違うだけです。

同じ人が、ある人にとっては頼れる先輩で、別の人にとっては放っておけない後輩である。これは普通に起きます。どちらも正しい。性格を1つに決めようとすると、この事実は誤差として捨てられます。他己診断は捨てません。

実際に設問を作って分かったこと

この考え方でオクリモノ診断の20問を作りました。作る過程で分かったのは、良い設問の書き方ではなく、失敗する設問には型があるということでした。

属性を聞くと、全員が同じ答えになる

最初のころ「長距離を歩いたとき、先に音を上げるのはどちらか」という設問がありました。これは関係ではなく体力を聞いています。体力は性別や年齢でだいたい決まる固定値なので、相手が年上なら誰が答えても同じ側に倒れる。その人の属性で答えが決まる設問は、関係を測れません。この設問は削りました。

デフォルトの行動を聞いても差が出ない

「誕生日には手紙をくれるか、欲しかったものをくれるか」。手紙をくれる人はほとんどいないので、答えはほぼ全員が同じ側になります。世の中の標準的な行動を選択肢にすると、その人の話にならない。これも削りました。

「言いそうなセリフ」を聞くと、相手ではなく回答者が出る

「この人が言いそうなのはどっち?」というセリフ形式の設問は、全部やめました。答える人が自分の語彙で言い換えてしまい、どちらを選んでも「その人らしい言い方」に見えてしまうからです。とくに「言葉で渡すか、行動で渡すか」を測りたい軸でセリフを使うと、両方の選択肢が言葉になって、軸そのものが死にます。

共通していたこと

3つとも、原因は同じでした。「その人がどんな人か」を聞くと失敗し、「二人のあいだに何が起きるか」を聞くと差が出る。前者は属性で、後者が関係です。

診断が「誰がやっても同じ結果になる」とき、たいてい壊れているのは判定の計算ではなく、質問のほうでした。

他己診断にも、できないことがある

正直に書いておくと、他己診断の結果が当たっているかどうかは、検証できません。

自己診断なら、本人が「違う」と言えばそれが答えです。他己診断は、本人に見せて「そんなことないよ」と言われても、あなたから見えている姿が消えるわけではない。どちらが正しいという話にならないのです。

だから他己診断の結果は、相手の説明としてではなく、あなたの見方の記録として読むのが正確だと考えています。あなたがその人を、どういう存在だと思っていたか。それを言葉にして渡すもの。当たっているかどうかは、実はそれほど重要ではありません。

思い浮かんだ人がいるなら、その人で試してみてください。答えているうちに、相手のことより自分のほうが分かってくるはずです。

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